# 冷え性
冷え性は未病のサイン
冷え性は“未病”のサイン
2025.12.03

「手足が冷たくて眠れない」「夏でも靴下が手放せない」――そんな冷えの悩みを抱える人は少なくありません。特に日本では、冷え性は多くの女性が自覚する身近な不調のひとつとして知られています。
この記事では、冷え性の定義や背景、健康リスク、そしてその要因について、東洋医学と西洋医学の視点を交えながら解説します。
冷え性とは?
冷え性とは、外気温に関係なく手足や体の一部が冷たく感じる状態を指す、主観的な体質認識です。医学的には病名として定義されていないため、診断基準も存在しませんが、本人の不快感や生活の質に大きく影響するため、健康管理の観点からは重要なテーマです。
西洋医学では、冷え性は「症状」として扱われることが多く、明確な疾患とはされません。しかし、東洋医学では「未病(みびょう)」という概念のもと、冷え性は治療対象とされます。
未病とは?
「未病」とは、病気ではないが健康とも言えない状態を指し、冷え性はその典型例です。東洋医学では、冷え性は「気(エネルギー)」「血(血液)」「水(体液)」のいずれか、または複数のバランスが崩れることで発症するとされます。例えば、血の巡りが悪くなる「瘀血(おけつ)」や、水分代謝が滞る「水滞(すいたい)」などが冷えの原因とされ、漢方薬や鍼灸による治療が行われます。
冷え性は日本特有?
冷え性は、日本では多くの人が自覚する身近な不調ですが、海外ではあまり注目されていません。その背景には、医療の考え方や生活習慣の違いがあり、冷え性に対する認識には差が見られます。
日本人と冷え性
日本では、西洋医学が導入される以前から東洋医学が発展しており、その考え方が生活や医療の中に深く根付いてきました。こうした背景もあり、「冷え」に対する感受性が高く、体調管理の重要な要素として意識されてきました。
東洋医学では、体質に応じて「陽虚(体を温める力が弱い)」「陰盛(冷えが強くなりすぎている)」などの診断が行われ、それぞれに適した個別の対応が取られるのが特徴です。冷え性は単なる不快感ではなく、体全体のバランスの乱れを示す重要な指標として捉えられています。
日本では冷え性の自覚を持つ人が非常に多く、特に女性では約7割が「冷えを感じる」と回答している調査もあります。これは、女性特有のホルモンバランスの変動や筋肉量の少なさ、月経周期による体温変化などが関係していると考えられています。
また、日本の気候や住環境も冷え性の要因となり得ます。冬場の室内暖房が足元まで届かない構造や、靴を脱ぐ生活習慣などが、末端の冷えを助長することがあります。さらに、現代のファッションや美容志向による薄着や過度なダイエットも、冷え性を悪化させる要因です。
欧米の状況
一方、欧米では冷え性という概念はあまり強調されておらず、医療現場でも「症状」として扱われることは少ない傾向があります。寒さに対する感受性は個人差があるものの、文化的背景や医療体系の違いにより、冷え性が問題視される度合いには大きな差があります。
例えば、欧米では「冷え」は一時的な環境要因として捉えられることが多く、体質としての冷え性という考え方は一般的ではありません。そのため、冷えに対する対策も日本ほど体系化されていないのが現状です。
健康リスクとの関連
冷え性を放置すると、さまざまな健康リスクが生じる可能性があります。

万病のもと
冷えは「万病のもと」とも言われ、肩こり、頭痛、便秘、不眠、うつなどの症状と関連しています。血流が悪くなることで酸素や栄養が十分に行き渡らず、慢性的な不調を引き起こす要因となります。
特に自律神経の乱れによる冷えは、睡眠障害や情緒不安定、消化不良など多岐にわたる症状を引き起こすことがあります。これらは一見すると冷えとは無関係に見えるものの、根本的な原因として冷えが関与しているケースも少なくありません。
妊娠期の早産のリスク
特に妊娠期において冷えは注意が必要です。冷えによって子宮の血流が悪化すると、胎児の発育に影響を及ぼし、早産のリスクが高まるとされています。ある研究では、冷えを感じる妊婦はそうでない妊婦に比べて早産のリスクが約3.4倍になるという報告もあります(※1)。
また、冷えによる免疫力の低下やホルモンバランスの乱れは、妊娠中の体調不良や胎児への影響にもつながるため、冷え対策は妊婦にとって非常に重要な健康管理項目となります。
冷え性の要因
冷え性の原因は多岐にわたり、以下のように分類されます。
生理的要因
筋肉量の不足や基礎代謝の低下、女性ホルモンの変動などが冷え性の一因です。筋肉は熱を生み出す重要な器官であり、特に下半身の筋肉量が少ないと体温維持が難しくなります。加齢による筋肉量の減少も冷え性の進行に関与します。
生活習慣要因
過度なダイエットや運動不足、偏食、ストレスなども冷え性を引き起こす要因です。特に現代女性に多い「痩せ志向」は、脂肪や筋肉の減少を招き、体温調節機能を低下させます。また、ストレスによる自律神経の乱れも血流を悪化させ、冷えを助長します。
さらに、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用による姿勢の悪化も、血流障害を引き起こし、冷え性の原因となることがあります。
病的要因
甲状腺機能低下症、閉塞性動脈硬化症、膠原病などの疾患が背景にある場合もあります。これらは医療機関での診断と治療が必要であり、冷え性が慢性的かつ重度の場合は、病的要因の可能性も考慮すべきです。
特に甲状腺機能低下症では、代謝が著しく低下するため、全身の冷えが強くあらわれることがあります。冷え性が単なる体質ではなく、病気のサインである可能性もあるため、注意が必要です。
遺伝的要因
近年では、冷え性に関与するいくつかの遺伝子が発見され、体質的に冷えを感じやすい人が存在することが分かってきています(※2)。これらの遺伝的要素は、冷え性のメカニズムを深く理解するうえで重要な手がかりとなり、将来的には個人に合わせた医療や体質改善のヒントとして活用されることが期待されています。
冷え性は体からのサイン
冷え性は、体質と思われがちですが、放っておくとさまざまな不調につながる可能性があります。特に女性に多く見られ、生活習慣や体組成、さらには病気や遺伝など、原因は多岐にわたります。
西洋医学では病気として扱われにくいものの、東洋医学では「未病」として重視され、冷えを対処することで体全体の調子を整えることができます。
日々の生活の中で、食事、運動、ストレスケアなどを見直すことで、冷え性は改善が可能です。早めに対策をとることが、健康維持への第一歩となります。
■参考資料
※1 中村 幸代:サスティナビリティの高い妊婦セルフケアプログラム「冷え症改善パック」の有効性検証,研究成果報告書(25463520),2015.
※2 富永 真琴:温度感受性TRPチャネル,生化学 94(2):236-257,2022

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