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病院給食を提供する栄養士
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病院給食を提供する栄養士
2025.10.01

栄養士と聞くと“病院”や“学校給食”を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも実は、企業やスポーツの現場、福祉施設など、さまざまな場所で活躍しています。今回は「入院中の食事提供」において活躍する栄養士を紹介します。
病院で働く栄養士とは

「病院の栄養士」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか?
「揚げ物は控えて下さい」「ラーメンは週1回までにしましょう」など、食生活の指導をしている姿を思い浮かべる方も多いかもしれません。
この患者への食生活指導は「栄養指導」という、病院で働く栄養士の重要な業務の1つですが、病院栄養士の仕事はそれだけにとどまりません。医師・看護師・薬剤師などと連携して患者をサポートする「栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)」の一員として活動する事もあります。
さらに、入院中の食事の献立作成や食材発注、調理や盛付、衛生管理も担っています。また、厨房で働くスタッフの管理も、栄養士の大切な役割です。このコラムでは病院の食事について、また、食事提供に関わる栄養士の仕事についてご紹介します。
病院食は冷たくてまずい?
1990年ごろまでは病院給食は冷たくてまずい、というイメージが強くありました。
しかし、最近では、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく保ったまま運搬できる「温冷配膳車」が普及したことにより、適温で食事を提供できるようになったことで、病院食の満足度が大きく向上しています。
制限の多い病院という環境で、食事の質を高めることで患者の楽しみが増し、生活の質(QOL)が向上しました。こうした取り組みは、治療への意欲や回復にも良い影響を与えています。
「食べる」ことも治療のひとつ
入院中の食事は、患者一人ひとりに対して、体格や年齢、疾患に合わせ、医師や栄養士が食事の内容や量を調整しています。
手術を控えた患者にとって、栄養状態はとても重要です。栄養状態が良い場合、傷の治癒が早く、免疫機能も正常に働き、感染症のリスクを抑えることができます。術後の肺炎や創部感染などの合併症も起こりにくくなるのです。
また、リハビリを進めるためにも、しっかりと食べることによって、筋肉量や体力が維持され、退院までの日数が短くなることもあります。
このように、入院中の食事はただ空腹を満たすためのものではなく、患者の回復を支える大切な医療の1つ、治療の一環なのです。
“食べてもらう”ための病院食づくり
患者に合わせた食事内容としては、塩分制限や、たんぱく質制限、脂質制限などがあります。ご飯、お粥などの主食の量も一人ひとり設定されており、さらに必要に応じ、食べやすいように一口大にカットしたり、ミキサーにかけてペースト状にしたり、食形態にも細やかに配慮がされています。
ただ、せっかく栄養価を合わせても、形態加工をしても、患者にしっかり食べてもらわなければ、意味がありません。
そこで、病院食ではおいしく食べてもらうためにさまざまな工夫がされています。たとえば、塩分が控えめの和え物に柑橘の香りを添えたり、魚を焼くときに香味野菜を使ったり、味付けが薄くても満足感が得られるような工夫がされています。
さらに、食事に飽きないよう、和・洋・中のテイストを織り交ぜる、肉・魚・卵など同じ食材が連続しないような献立にする、月1回は旬の食材を使った行事食を実施し、季節感や食事の楽しさを演出するなど、こうした工夫の積み重ねは、まさに栄養士の腕の見せどころでもあります。
治療を支える厨房スタッフ
食事提供の場では、このようにさまざまな種類や、個別に対応をした食事を準備していますが、1日3食、毎日決まった時間に提供しなければなりません。なぜなら、食事の時間を基軸にして、血糖値を管理したり、検査を予定したりしているからです。
また、台風や大雪の日など、早めに閉店するレストランもありますが、病院の食事はそういうわけにはいきません。患者の食事を時間通りに提供するために、厨房スタッフも病院スタッフの一員として、台風でも大雪でもいつも通りに出勤し、業務につきます。厨房の中でも医療の一端は動いているのです。
やりがいとは?
入院中の食事は治療の一環として制限が多くあり、美味しさを一番に追及できず、健康なときに楽しむ外食のようにはいきません。
制限のある中で、毎日できる限りでおいしい献立を検討しています。その成果をみる機会として、食後の残食状況の確認をします。もちろん体調の都合で、一口も手を付けられないで返ってくるときもありますが、残食が少ない日は、おいしく召し上がっていただけた証といえます。
患者の「食べたい」という気持ちに寄り添えたかな、少しでも元気になれる手助けが出来たかな、と思い、空の食器の前では小さくガッツポーズをして喜びます。こういう日を増やすためにも、常においしく食べてもらえる献立作りを心掛けています。
まとめ
病院の食事提供に携わる栄養士は、限られた条件の中で「おいしく」「治療につながる」食事を届けるために、日々工夫と努力を重ねています。
一人ひとりの「今日の一食」が、心と身体を支える力になるように。栄養士は医療を「食」で支える、プロフェッショナルなのです。





