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亜鉛
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亜鉛~体の小さな守護者~
2026.02.04

この記事では、必須ミネラルの1つである亜鉛について紹介します。
亜鉛の歴史

亜鉛は古代から金属として利用されていましたが、栄養学的な重要性が認識されたのは比較的最近です。亜鉛が成長や発達に欠かせない栄養素であることが明らかになったのは、1960年代にイスラム圏で行われた低身長や発達不良に関する調査がきっかけでした。当時、イスラム圏では未精製の穀類(全粒粉)を使ったパンが主食でしたが、未精製の穀物や豆類の外皮に多く含まれるフィチン酸が亜鉛の吸収を阻害し、慢性的な亜鉛欠乏を引き起こしていたことが分かりました。
一方、西洋圏でも全粒粉のパンは食べられていますが、発酵の過程でフィチン酸が分解されるため、亜鉛吸収阻害の問題はほとんど起きていませんでした。
改善策として、これまでの伝統的パンの製法に長時間発酵を取り入れるなどの動きがあり、なんとイランではこの100年で男性の平均身長が約16.5cmも増加したとの報告があります。
こうした歴史的発見は、亜鉛が生命活動を支えるうえで欠かせない栄養素であることを明確に示しています。
亜鉛のはたらき
亜鉛の構造
亜鉛は、酸やアルカリに溶けることで、体内ではたらく性質を持ちます。人体では主に骨・筋肉・皮膚・肝臓・腎臓などに分布し、総量はわずか約2~3gですが、DNA合成・たんぱく質合成・細胞分裂などをサポートする300種類以上の酵素反応に関与しています。
動物性食品の亜鉛と植物性食品の亜鉛の違い
肉類・魚類・卵・ナッツや大豆製品などに含まれる亜鉛は、たんぱく質と結合した形で存在します。植物性食品に含まれる亜鉛はフィチン酸の影響を受けることがあるため、動物性食品の亜鉛の方が吸収されやすいとされています。
亜鉛はどれくらい必要?
日本人の食事摂取基準(2025年度版)では、以下のように1日当たりの推奨量と耐用上限量が定められています。
推奨量
男性(18歳以上):9.0~9.5㎎(年代による)
女性(18歳以上):7.5~8.0㎎(年代による)
耐用上限量
男性(18歳以上):40㎎
女性(18歳以上):35㎎
亜鉛不足ととり過ぎについて
亜鉛が不足すると
亜鉛不足で良く知られている症状は「味覚障害」ですが、味覚障害がある場合には、中等度~重度の欠乏・または長期間の亜鉛不足を疑います。味覚を司る「味蕾細胞」は新陳代謝が早く、亜鉛不足で再生が遅れると症状があらわれます。
通常の食事で多少不足する程度では、すぐに味覚障害が起こることはなく、傷の治りが遅れる・風邪をひきやすくなる(免疫力低下)・皮膚トラブルが起こるなどの症状が見られます。
亜鉛をとり過ぎると
亜鉛は体内で重要な役割を果たしますが、とり過ぎた場合、様々な症状を引き起こしてしまいます。一度に亜鉛を多量に摂取した場合、小腸粘膜の刺激により数時間以内に吐き気・嘔吐・下痢・腹痛などがあらわれます。また、過剰な亜鉛摂取は体内のミネラルバランスが崩れ、発熱・倦怠感などを引き起こすこともあります。慢性的に亜鉛の過剰が続くと、亜鉛は銅と強く結合してしまうため、銅欠乏による神経障害・骨粗しょう症・鉄欠乏性貧血・白血球減少などを引き起こします。
食事から自然にとる分には過剰になる事はほとんどありませんが、特定の食材のとり過ぎや、サプリメントを利用する場合には、必ず推奨量を守りましょう。
亜鉛を含む代表的な食品
カキ・牛肉・豚肉・鶏肉・卵・納豆……など
調理時のポイント
亜鉛は水に溶けにくく、熱にも強いため、調理による損失が少ない安定した栄養素です。しかし、食品中の亜鉛はたんぱく質やフィチン酸と結合しており、そのままでは腸管で吸収ができません。この結合は胃酸や食事中の酸によって分解され、亜鉛は小腸で吸収されます。
高齢者の方など胃酸の分泌が少ない場合、亜鉛の吸収率が低下する可能性があります。その場合には、酢やレモンなどの酸味を加えることで吸収率を高めることができます。
まとめ
亜鉛は、わずかな量で私たちの健康を支える“体の小さな守護者”です。DNA合成や免疫機能・創傷治癒など、生命活動に欠かせない役割を果たしています。通常の食事で不足や過剰になることは少ないですが、偏食やサプリメントの過剰摂取には注意が必要です。亜鉛を効率よくとるためには、動物性食品を意識して取り入れ、酸味を加えるなどの工夫も効果的です。バランスの良い食事で、亜鉛を味方につけて健康を守りましょう。
■参考資料
厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2025年版)
Gibson RS.A Historical Review of Progress in the Assessment of Dietary Zinc Intake as an Indicator of Population Zinc Status.Adv Nutr 3:772-782,2012
NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC). A century of trends in adult human height.elife 5:e13410.2016





